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2019年12月11日第6回東西大学対抗戦 Tokyo Bowl 戦評 『法大、Tokyo Bowlを制す』(法政大学33-20神戸大学)
第6回東西大学対抗戦Tokyo Bowl 2019年12月8日(日) 

『法大、Tokyo Bowlを制す』

呼び込まれたときに、少し躊躇したが、岩田主将から『おいでよ』と一緒に表彰式のグラウンド中央部へ主務が走りついた。その走っているときからもう、彼女は涙ぐんでいた。

ボウルゲームは2年前の京都大学に続いて2度目の勝利となった法大。
「勝とうとしてしっかりと準備してきました。4年生最後の試合です。4年生が活躍して終わり次へとつなげていきたい、その一心でTDを重ねていきました。守備もDLラッシュがとても良かったですね」
試合を振り返ってはきはきと応えたRB3岩田主将だ。
ランナー、ブロッカー、リターナーなどを含めTDを上げた八面六臂の大活躍をみせたRB岩田。しかもキャプテンとしてチームを存分に盛り上げていた。それは個性豊かで、脈々と根底に息づく法大主将らしさの顔そのものであった。
「これまでやってきた分、その練習の結果が出て楽しめました。それにOLとWRの良いブロックがありましたからあれだけ走れたのです」
もとからキープランに才覚を持つ4年生QB12勝本はTDに結びつけるオープンのロングラン54ヤードなどを記録、大会MVPを獲得した。
そこでふたりとも朗らかに、やりきったという健やかな表情を見せていた。

これは4年生にとって最後の試合だった。

ボウルゲームの東西対抗戦、そこで輝かしい勝利を得て、学生フットボールが終わる。
その目的、あるいは先に見えるなにかを求めてのトレーニング、4年間の集大成、すべてをかけた試合だった。
そしてフィールドプレイヤーはもとより青と橙色のベンチサイドで左右前後にてきぱきと動き回るスタッフメンバーも、それぞれの役割まっとうしていた。
「1年間やってきたことをすべて出そうと伝えて、これまでの練習を見守ってきました」
いつも歯切れよくていねいに語る有澤監督が、いくらか目を細めながらそう述べた。

躍進の関西3位校となった国立大学の神戸大はまとまりが良く身体も鍛え上げられ、自分たちのやりたいフットボールが表現できていた。
大会MIPで走力を兼ね備えた4年生QB19是澤が、視野が広いバランスアタックを展開、2本のパスTDと4年生RB36西田のパワフルなランで前進。FGを加えて4点差まで追い上げた。しかし、試合巧者の法大の落ち着いた攻めに突き放された。
「テンポよい多彩なプレイを用意していたのですが、勝ち切れませんでした」
矢野川ヘッドコーチが悔しさをにじませた。
またQB是澤は『自力の差があったように思います』と述懐して、さらにWR11中谷主将は『スロースタートで入ってしまいました』と素直に反省の弁を口にした。

前半の立ち上がり、一気呵成にスピードある攻めとエースRB29阿部の軽快なランを軸に攻め上げて連続3TDを奪い、心に余裕を持った法大。
そこでハーフタイムで守備システムを立て直し、インターセプトのチャンスを逃さず懸命に追いすがり、好ゲームをメイクした神戸大。

また西の新神戸駅からであろうか大挙、試合会場の富士通スタジアム川崎へとやってきた50名余の神戸大チアと大学応援団、そして関連するファンの皆さんは陽あたりがよく観やすいバックスタンドから熱心にフィールドへ声援を送っていた。

東西大学代表両サイドのベンチとスタンドを眺めながら思うのは、こういうボウルゲームが全国各所で開催されるのは、どうであろうと。
伝統ある野球とサッカーやラグビーなどと同様に単純に学生日本一を決めてしまうのも良いが、各地区のボウルゲームから進んで準決勝と決勝の3試合という展開も面白そうだ。

選手とスタッフで1チーム100人~150人以上にもなる大掛かりなアメリカンフットボールは、東京大学、京都大学、神戸大学、横浜国立大学、東北大学や北海道大学などの有数な国立大学に活躍の場がみられる特色ある学生スポーツだ。
冬、全国各地でほぼ同時期に、さらに風土と地域色を打ち出したボウルゲームという存在もまた、競技普及やその振興になってこよう。

そういう新たな構想は先としても、このTokyo Bowlで、にこやかに汗いっぱいに躍動する東西学生たちの今季ラストゲーム、清々しさ満載であった。

〔関東学生アメリカンフットボール連盟広報委員長 岩瀬孝文〕