2017年度 BIG8戦評
2017年度リーグ戦
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BIG8第5節までを振り返り開幕して2か月経過、いよいよ終盤の第6節を迎える。5節までを振り返り、日本一過酷なBIG8のポストシーズンを占いたい。(記載は第5節終了時点の勝点順)
横浜国立大学
関東大学で最長身の193cmの主将OL71李を中心に、攻守蹴バランス良く、唯一5連勝。攻撃では、QBレイティング1位の12福岡が、RB23信原のランとWR7土生や26柘植へのパスを使い分け、平均36得点と好調。守備では、DT78福田や91能勢、DB13岩崎らの健闘もあり、平均10.4失点と最少。桜美林とのタイブレークや駒澤との接戦では、K13岩﨑が最長50ヤードのFGを決めるなど、接戦にも強くなった。後1戦勝てば、2年連続でチャレンジマッチ、今週が最大の山場。
東京大学
重厚なラインとパワフル&俊足のランナーRB32樋山と28荒井が、新体制でのヘッドコーチの下、フィールドを縦横に走る。QBは途中で16松下から14伊藤に代わったもののWR15古賀や13瀬戸、ランアフターキャッチで稼ぐTE83深澤と役者が揃う。守ってはLB47大谷のインターセプトや確実なタックルで被獲得を抑える。誤算は国士館との第5節。2Q以降の小さな綻びから、4Qには19点を献上。守備の修正と「一戦必勝」が急務となった。
国士舘大学
攻守のアスリートが、個人記録のランキングに再々登場する。攻撃では、ラン&パス共に秀でたQB18出口がエースRB1川嶌を走らせ、成功率一位の第3ダウンでは主将WR3五百蔵が難無く更新。守っては、ロスタックル一位のDE11エドアルド光、後方ではDB17瀬戸らが奮闘。中盤で東海・桜美林に僅差で敗れたものの、東大戦では攻撃が止まらず619ヤードを稼ぐ爆発力を見せ、快勝。第6節の横浜国大戦が今季の難所となった。
東海大学
開幕こそ横浜国大に圧倒されたものの、態勢直し、東大には勝敗は決していたが14:24と肉薄。RB5伊藤やDB12松野らがポテンシャルの高さを覗かせて、国士館、駒澤に僅差で勝利。DL99榎園のスピード&パワー溢れるタックルは、幾度となくQBやボールキャリアを地に這わせた。昇格初年度、なんとしてでも、2部との入替戦だけは避けたい。
桜美林大学
国士舘に引けを取らないアスリートが名を連ね、コーチング体制も申し分ない脅威の軍団。第二戦の横浜国大戦では、QB12渡辺と2枚看板の7吉田、RB20清水、21石田の攻撃力にモノを言わせての接戦。K18神杉の52ヤードFGやキックリターンなどで、絶えず、相手を危機に晒す。駒澤と国士館を撃破した勢いで、東海と対峙して更に上位を目指す。
駒澤大学
フィジカルもスキルもトップレベルのチームが、タイブレークで学芸を退けたものの、勝利の女神微笑まず、桜美林、東海、横浜国大戦では1、2点差で惜敗。リーグを代表するRB24末廣のランを中心にした組立で守備を攪乱。守備ではDL99阿部の強烈な圧力で、そのサイドのランは効果なし。DB新増はサイズを活かしてのパスインターセプト1位、数度の危機を救った。東大、国士館とのタフな試合が続く。
東京学芸大学
選手もそうだが、若手OB/OGが仕切る観客席も元気一杯、BIGの応援大賞と言っても過言ではない。中盤、小細工無用の攻守の為か主力が痛み、イメージ通りとは行かなくなった。QB19高橋の後を受けた15伊藤は、自らの機動力を生かしてのラン・パス。RB20新関の思い切りの良いランやWR瀬尾の勝負強さは駒澤戦で発揮された。入替戦出場は決したが、残り2戦全力で戦って欲しい。
一橋大学
接戦になることなく、TD差3本以上の敗北が続き、白星に恵まれない。主将RB28佐々木、WR4濱野が奮闘するも、ファンブルやインターセプトで攻撃は繋がらず。DE51黒野とDB7岩波らの守備も攻守兼任が後半から響き、体力戦で消耗。同じ国立大学の学芸には、プライドを賭けて臨んで欲しい。
広報部長 前川誠 -
第1節 2017年9月10日(日)東京大学○38-14●桜美林大学
重厚かつ繊細な東大
今季からスクールカラーの水色をベースに、UCLAスタイルのカラーリングアレンジで色あざやかに発進した東大。冬からの筋力トレーニングの成功もあり足腰の太さが際立つ。
「ナイスゲーム、これがいまの力だ。練習の成果がある。みんな、もっともっと強くなれる。だから、さらに日々のトレーニングをやっていこう。私たちは総合力のチームなんです」
アメフトジャパンチームを指導していた森ヘッドコーチが明快に語る。
エースQB16松下からコンビネーションのよいTE83深澤へ投じ、キープランで走ってよしのTD量産体制にある東大。そこにディフェンスでは全員で止めるシステムが構築されている。
「チャレンジマッチを含め8試合すべてに勝利を得る。そういう勝つにふさわしいチームになっていくことが今シーズン最大の目標です」
右ガードとして、タフに押しまくるOL51遠藤主将だった。
それは、鍛え上げられているキックオフリターンTDに始まり、果敢なキックラッシュで、ボールをはじいてのリターンTDなど、そしてつねに攻めのディフェンスをみせて、相手を追い詰め、終始プレッシャーをかけ続けた。
「勝てる試合を落としたような、なんとも言い難いが。私たちは試合経験が豊富な4年生を中心に盛り立てていくチーム。とくに強いヒットにこだわりをもっていきたい」
数字は上回っていながら敗れて、とはいえ日の出の勢いにある桜美林大の関口監督である。
その上昇気運いっぱいのままBIG8へ登場した注目の桜美林大は最後までボールを追う、ひたむきさが各所にみられる好印象にあるチームだ。
「今日はシステマティックな体型に最初、対応できなかったのが敗因です。チームカラーは熱い赤です。試合中は心が限りなく燃えます」
主将のLB矢島は目を輝かせながら言う。
このあたりは落ち着いたQB12渡辺からWR85ヴァンデゥーゼなどへのパッシングの精度を高めることで、優位にゲームを進めることができるであろう。
関東学生アメリカンフットボール連盟広報委員長 岩瀬孝文 -
第1節 2017年9月10日(日)国士舘大学○44-21●東京学芸大学
バランスアタック国士館
その鍛え上げられた身体から、抜群のスピードをもってタックルに向かい、WRは最後までパスに食らいついていく、そういう力強さを根底に有する俊英な国士館大だった。
「メンタルのエラーが出たのでしょうか、ここ2週間の流れが良くなくて苦慮していました。それだけに後半はじめに受け身に回ってしまうなど、散々でした。またこちらのゴール前の詰めの甘さもあり、まだまだですね」
オープニングゲームにおける44点という大量得点にも、決しておごらずの真摯な姿勢を保つ大野監督だ。
QB18出口の強肩と落ち着き、さらにはエースQB1川嶌のスーパーアタックのランおよびQB&RBの6人ユニットで攻める厚みあるバックヤード陣と、スピードを生かした的確なOLブロックで道をこじ開け進撃していく、そこに伝統の国士らしさが見られた。守備ではアグレッシブなDL11寺田にLB9岩永のコンビネーションが良く、視野が広いDBと、それぞれが連携しあうシステムで余分な点を許さない。しかも攻守ともにスタミナが充分にあるのだ。
「つねに冷静に正しい判断をしていきたいです」クールな姿のQB18出口だった。
かたや敗戦に多くを語らず、凛とした面持ちの山田監督。
「甘い練習をしてきたから、こうなる! 厳しい練習をしていこうではないか。それとメンタルを強く、これが勝利への道なのだ」
基本のタックルと頭脳プレイでコツコツと前進をはかる学芸大は、ひとえに厳しさあふれた練習と、しつこさあふれるタックルが持ち味。
それも決め打ちのプレイながら、要所にしっかりとランパスが決まり、そこからの二次展開が計算できる的確なOLブロックさえある。
いわば相手の個人技に対して、実直な選手全員での熱きタックルで迎え撃つのが基本方針、それがみてとれる。
「つきつめて、本気の学芸のフットボールで突き進みたいです」
雪国津軽のじょっぱり魂、根性のフットボールを体現する青森出身のLB52野澤主将は、柔和な眼差しながらチームをそのようにとらえていた。
「やはり、まだ立ち上がりが緊張するんですよ。ファーストプレイからっしっかり落ち着いてゲームメイクしていきたいです」
硬式野球部出身でボディバランスにたけるQB19高橋が気を引き締めた。
関東学生アメリカンフットボール連盟広報委員長 岩瀬孝文 -
第1節 2017年9月9日(土)横浜国立大学○47-2●東海大学
横国すこぶる安定
横浜市内の高台に校舎がそびえ、その広大な敷地にある野球グラウンドのさらに先にある土のグラウンドで熱心に汗を流し続けた横浜国大。
そのどん欲さとボールの支配力は、さすがであった。
静かに言葉を選びながらの話しぶりはいつもと一緒な田島ヘッドコーチである。
「私たちのチームが強いと思ったことはこれまで一度もありません。それだけにシーズンの立ち上がりはいつも不安でたまらなくなって。最終的にめざすところは突き抜けた強さ、それなのです」
前年度のチャレンジ進出で選手全員が自信をつけた横国は、対戦相手の細かなスキを見つけて、たたみかけるパワフルさがあること、そこに特徴がみられた。
経験豊富なQB12福岡からWR7土生とWR26柘植、決め手になるTE8山下への鋭いミドルパスがオフェンスのキーとなる。そこに決定力あるキッカーK13岩﨑のロングキックも鮮やかに。
「全員でプレイをやり切ること、それが大前提です。いまはフォットボールが楽しくてしょうがないのです」
大柄なOL71李主将はにこやかに、これも早口にたたみかけてきた。
またエースQB福岡が前を見据えて言う。
「ほんとうに東大に勝ちたいんですよ、これまで負け続けていますから。その借りを返したくてたまりません」
目標あらたに、そういった実のあるフットボールを体現する横国だった。
捲土重来、関東2部から上がってきた東海大は、もとから高校フットボール経験者が多く、そこからの緻密な展開が可能なチームであった。
「選手たちにはもっと熱くやってほしい、けっして淡々と終わってはならないのです。それとひとつのプレイに集中する、これが我々の基本理念です」
BIG8に昇格しながらも、いまだ迷いがあるのではと述懐する中須賀監督。
それでも魂がこもるフットボールが魅力となるトライトンズだ。
「オフサイドなど細かなミスが出ています。スピードある攻めとすべてにおいて泥臭いままアタックしていきたく思っています」
低いドライブで突進する主将のFB20樹下、そのパワフルなランでチームをリードする。
できれば東海の懐かしのトリプルオプションを見てみたい、それは秋の郷愁であろうか。
関東学生アメリカンフットボール連盟広報委員長 岩瀬孝文 -
第1節 2017年9月9日(土)駒澤大学○44-0●一橋大学
勢いあるまま駒大
前年に、あと一歩でチャレンジマッチを逃していた実力派の駒大。
あのとき悔しさにまみれた主将のSF青島は、いまは立派な社会人として活躍、そして土日には「サンデーコーチですけれどもDBを指導しています」と謙虚ながらに言う。
心暖かなOBに見つめられて、現役選手たちは開幕戦に明るくおおらかに活気をみせた。
「とにかく春から懸命にやってきました。今季こそはチャレンジへと、その目標が定かですから。コーチも増えて、より細やかな選手指導ができています。今日はプラン通りのゲームができました。これからも一戦一戦しっかりと闘っていきます」
新倉監督は試合後にさわやかな笑顔を見せた。
注目のプレイヤーは対人に強いRB24末廣、RB31小宮、タフさがあるRB29割谷、WRは若いが伸びがある。さらに守備のかなめはDB2五十嵐主将がまとめあげる。また駒大高の硬式野球部からの入部と高校ラグビーの名門東福岡高からの選手がうまくかみ合い厚みあるチームが形成されている。
国立大学の雄、一橋大はチアリーダーとその音色がたくましいトランペット応援団に、その特色がみられる。一見、トータルバランスのフォットボールが基調となっているが、ときにセンスあるQB11廣瀬がパッシングに才覚をみせる。
「ロースコアの展開に持ち込むのがうちらしさ。OLのベースをどんどん上げていくことと、確実なタックルでフィニッシュさせる。これなのです」
西沢ヘッドコーチは往年の一橋らしさを強調する。
また主将のTB27佐々木はミスを懸念していた。
「我々は自分たちの実力を過信していたのではないか。自滅するミスがたくさんあって、それではいけないんです。まじめに、ひたむきにプレイすることがなによりも大事です」
基本プレイの徹底により、いつもながらの一橋らしさのまとまりの良さが、復活してくる。次節以降の闊達としたプレイに期待したい。
関東学生アメリカンフットボール連盟広報委員長 岩瀬孝文